音の葉

音楽を聴いて感じたこと

Alcachofa - Ricardo Villalobos

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"このまま止まらないでいたい究極のミニマリズム。本能に抗えない、原子的な猿にまで退化寸前のドラッグミュージック"

 

まず最初にこのブログは僕個人の音楽的ブームや流行りみたいなものが分かりやすくリアルタイムで反映されるブログだ。世の中でいう大名盤に今一度フォーカスを当てて、レビュー形式にして記事にするのもアリなのだが、あとで見返してみたときに、この時期はこんなのに没頭してたなぁと振り返れる一つの記録としての役割を果たせればなと感じるのだ。メジャーな名盤レビューはネットの海にありふれているわけで、少しニッチなジャンルにも目を向けてみたい。というわけで今回はクラブミュージックのマスターピースをひとつ。

 

リカルド・ヴィラロボスはチリ出身のDJだ。彼はミニマルテクノ、マイクロハウスと呼ばれるジャンルの発展に大きく貢献し、90年代のダンスフロアの一つの在り方を提示したパイオニア的存在である。ちなみにこのアルバムは彼の記念すべき一枚目のオリジナルアルバムにして、クラブミュージック系専門サイトResident Advisorの2000年代のベストアルバムランキングにて、ダフト・パンクやアヴァランチーズを抑えて見事一位に輝いている。

 

ミニマルとは必要最小限という意味を持つ言葉だ。彼の音源を聴いてみると決して派手ではなく、音数もたしかに必要最小限。僕も最初は目立ったキャッチーさも展開もなくひたすら同じような音を繰り返すこの世界観に理解が追いついていなかった。しかし逆の発想をしてみればさほど難しいことではなかった。早く次を聴きたいという意識ではなく、ずっとこのまま終わってほしくないという欲求が湧いてきたのだ。反復する世界は病的なまでの中毒性を僕に与えてくれたのだ。

 

ねちっこいビートを主軸に置き、リズムがブレることなく何度も反復するシンセだったり、効果音が行ったり来たりしながらあっという間におおよそ9分間あるトラックは姿を変えていく。一つ一つの曲はストーリーを紡ぐように、一定の流れを作り出している。それらは増幅していき、僕らの体内のリズムと同期を始める。余計なものは必要ないのだ。原子的なビートが一つあれば、ちょくちょく顔をのぞかせるメロディやエフェクトがアドレナリンの分泌を手伝い、ほんの少し揺らしていた身体が、気付けばダンスを止められなくなっている。

 

つらつらと個人的な主観でアバウトな感想をひと通り書いたが、このアルバムに関しては聴いてもらうほうがずっと早い。一つ保証できることがあるとすれば、このアルバム及びミニマルテクノはハマる人はとことんハマり、中毒性は数ある音楽の中でも最上級のものだ。この手の音楽は感覚的なほうがいい、歌詞もないし、身体を委ねるだけでいい。考えることを放棄して原子的な感覚を取り戻させてくれる素晴らしいエンターテイメントだ。

 

何点か伝えたいことがある。このアルバムはおそらくストリーミング配信してない。現物も国内で見ることはほぼなく、かなりレアなものになっているのでYouTubeで聴くかAmazonでも少し高いが買うことはできる。多くの人に聴いてほしい音楽なのでぜひ実践してみてほしい。それと再生環境が整っていれば、低音をマックスにして聴くとぶっ飛ぶような快楽を得られるのでこちらの方法も是非。

 

これ以上余計な解説はいらないかもしれない。ただ確実に言えるのはこの一枚に封じ込められているのは今まで出会ったこともない至高のダンスミュージック、真にこのアルバムの中毒性に気づけたときには新たな音楽の楽しみ方と出会えるということだ。お酒を片手にミニマルな世界へと旅立ってみてはどうだろう。